"陳情者"という言葉が思い浮かんだ。中国には政府に陳情を訴える人々が北京に集まり、陳情村を作るほどだ。その一方で、この「靖国」の監督は「何か不満があって何かを表現したい、そういう風にドキュメンタリーは作られるわけです」とわざわざ自身の映画製作の動機付けを発言し、「靖国映画」を制作して見せることで日本全体に陳情したかったのだ、という熱い思いの内容を全編に渡りひしひしと伝えてある。北京の陳情村の人々と違うのは、メディア側の人間にすでに著者が居たということだろう。
広告帯からして「日本人へ、プライドを問う」。この挑戦的な言葉と著者の顔写真があるのが、「靖国問題」のヒーローにでも祀られたかに覗える。実際に執筆した黒田麻由子氏が「です、ます」調で控えめに聞き取りし直して、読者は取り付きやすくしてもらった印象を受ける。そうでないと内容自体が、ひたすら映像制作に係る事でやっと学び取った考え方や、自らも熱心に勉強し、また身体を張って「フィクション・ノンフィクション」に携わる人間として、他者に問いかけた事でついに獲得できた有益なフィード・バックも満載な内容からは、著者のプライドの膨張感に読者は圧されるだろう。
「戦争後遺症の映画をつくった私自身も戦争後遺症に苦しむ病人の一人です、この病をどう治療するか、一緒に考えていきたいのです」。こんな著者の率直さからも、いつまでも「靖国映画」を忘れず共に着目してゆきましょう、といわんばかりのメッセージと共に、映画制作における矛盾を多義性のテーマに取り替えただけのことをあまねく披露してある。「病人」という割にはやけに冷静沈着にエクスキューズできている。いやに秀逸な''陳情本″であったとしか言いようがない。
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靖国 YASUKUNI Kindle版
一時は上映中止に追い込まれながら昨年公開された映画『靖国』の監督が、自身の死生観、日本人と靖国、神道、天皇制について語る。また、土木典昭、鈴木邦男などとの対談、日本人学生との対話も収録。
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2009/8/7
- ファイルサイズ6882 KB
- 販売: Amazon Services International LLC
- Kindle 電子書籍リーダーFire タブレットKindle 無料読書アプリ
登録情報
- ASIN : B010UZMO6W
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2009/8/7)
- 発売日 : 2009/8/7
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 6882 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 134ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 727,814位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 565位神道・祭祀 (Kindleストア)
- - 1,283位日本思想史
- - 1,572位神道
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2009年10月10日に日本でレビュー済み
1.内容
上映中止騒動まで起こった映画『靖国』の監督さんが、生い立ちを絡めつつも、監督さんが考える靖国神社問題を語ったもの。その他、対談が3本。
2.評価
正直言って、来日したとは言え、共産党一党独裁下の国の人だから、偏見たっぷりの本かと思った。しかし、それは私の偏見のようで、実際には、一人のドキュメンタリー監督が、悩みながらも、日本人における靖国神社や戦後の問題について考えている本である。著者の見解に全面的に賛成する必要はないが、他国人の目から客観的に見た本は、それなりに参考になると思うので、星5つ。
上映中止騒動まで起こった映画『靖国』の監督さんが、生い立ちを絡めつつも、監督さんが考える靖国神社問題を語ったもの。その他、対談が3本。
2.評価
正直言って、来日したとは言え、共産党一党独裁下の国の人だから、偏見たっぷりの本かと思った。しかし、それは私の偏見のようで、実際には、一人のドキュメンタリー監督が、悩みながらも、日本人における靖国神社や戦後の問題について考えている本である。著者の見解に全面的に賛成する必要はないが、他国人の目から客観的に見た本は、それなりに参考になると思うので、星5つ。
2009年8月6日に日本でレビュー済み
映画『靖国 YASUKUNI』の編集後記として書かれた本ですが、作者の思いが率直に書かれています。